2017年5月29日月曜日

「なぜ?」があればネタになる

ディレクターはこんなことでネタを思いつく

 テレビのネタは、日ごろの疑問から思いつくものも多くあります。新しくなくても、「なぜ?」を解明する現象が複数あればディレクターにとって、提案する理由ができます。

今となっては、実現しなかった企画ですが…。


古い車両の展示やシミュレーターで遊べる「京王れーるランド」
 今年(2017年)3月の話です。ビジネスセミナーのため、東京に行きました。上京中に会社から「企画メモを出すように」というメールが来ていたので、「何かないかな〜」と考えていたところでした。

 久々に試験以外での上京。さらに、セミナーまで時間があったので、一度行きたいと思っていた京王れーるランドに行くことにしました。

 京王れーるランドは多摩動物公園駅に隣接した京王電鉄のミニ鉄道テーマパークです。





『鉄道むすめ』のグッズからひらめく

 わたしの目的は鉄道グッズ。以前東京に居た頃、京王線沿線に住んでいたので、主に使っていた駅の「駅名(駅の看板)キーホルダー」が目的でした。しかし、売り場でひときわ目を惹いたのが「『鉄道むすめ〜鉄道制服コレクション』橋本わかばのグッズ」です。
『鉄道むすめ』橋本わかばの携帯ストラップ
 
 『鉄道むすめ〜鉄道制服コレクション〜』とは、鉄道模型会社トミーテックが各鉄道会社の許可を得て考えられた、いわゆる“萌えキャラ”です。

 実在する鉄道会社で働いている女性という設定のオリジナルキャラクターで、もともとはフィギュアシリーズとして2005年から数量限定で販売されていました。

 今ではフィギュアの他に、鉄道模型やキーチェーン、クリアファイル、ステッカーなど多岐にわたります。最近では鉄道会社の依頼を受けてつくる場合もあるとのことでした。

 “鉄道むすめ”のキャラクター名は各鉄道沿線の駅名に由来しており、橋本わかばの場合、

橋本=京王相模原線 橋本駅
わかば=京王相模原線 若葉台駅

というように、その沿線の利用客だったらすぐわかるように考えられています。

 ウインク・敬礼・指差し確認の3種類ある『橋本わかばの携帯ストラップ』を眺めていて、あることに気づきました。

「札幌市交通局には“萌えキャラ”がいない!」

“萌キャラ”がある交通事業者が2社北海道に存在

「では、北海道にはないのか?」さっそく探すと…。
いやいや2社ありました。

 1つは『鉄道むすめ』のキャラクターになっている、函館市電(函館市企業局交通部)の函館ハイカラ號車掌“柏木ゆの”と運転士“松風かれん”。
なんと2009年から萌えキャラがありました。

 2つ目は、北海道北部の日本海沿岸でバスを運行する沿岸バス。『フリーきっぷ』に萌キャラを2009年から使っています。 “豊岬あゆみ”などのバスガイドや運転士の“清川ありあ”、 “観音崎らいな”など沿線に住む少女をモチーフにした、バス会社オリジナルの“萌えっ子キャラクター”です。

道内に“萌えキャラ”がある交通事業者が2社存在しているのに。
「札幌市交通局には、なぜ萌えキャラがいないのか?」
テーマはこれできまり!

企画会議を通過しました。あとは、電話での質問と具体的な取材交渉です。

「なぜ?」に納得のできる「答え」と明るい「見通し」が必要!

 “函館市電”は「『鉄道むすめ』のイベントがあると、遠くから来てくれる人がいる。また、“鉄道むすめ”を使った、マナー向上のためのステッカーは地元利用客に好評」。

 “沿岸バス”は「毎年シリーズを重ねるごとにフリーきっぷの売上が増えている。関連グッズの売れ行きも好調。さらに地元では観光PRや交通安全の啓発活動、タクシーやフェリーのラッピングに使われている」と、その効果性を実感しているようでした。

そして、肝心の札幌市交通局です。
「札幌市交通局になぜ萌えキャラがいない?」という質問をしたところ、

ゆるキャラのってこーず(札幌市H.P.)
「今まで、利用促進やイメージ向上のための方策はいろいろ考えてきたが、
『萌えキャラは議題として挙がってこなかった』というのが現状」というお話でした。

確かにわたしの記憶でも、ゆるキャラ“のってこーず”やマナー向上のためのキャラクターがあったことは覚えていました。

 しかし、この話だけでは札幌市交通局を責める企画になってしまいます。責任追及の話題ではないので、これだけでは材料が足りません。

「エンディングは明るい見通しにしなくては」と、何日か調査と質問を繰り返しました。

 現在、札幌市交通局は地下鉄3路線。市電(路面電車)1路線を運行しています。

 いろいろ質問をしているうちに札幌市電に萌えキャラぽいものがあることがわかりました。電車(市電)事業所の職員が考えたもので、市電関係者はみんな知っていました。

 年に1回行われる電車事業所のお祭り『市電フェスティバル』でも、萌えキャラぽいイラストの書かれたポロシャツを着ていることがわかりました。

その萌えキャラぽいものに期待が膨らみます。

「これはイケる!」と思ったわたしは
「実は札幌にも萌えキャラがいた!今後の成長に期待したい」と終わる目論見で取材を進めようしていました。
残念ながら、日程調整を含めた取材交渉がうまく進まず、企画はボツ!

「地下鉄にのるっ」(京都市交通局H.P.より)
 取材のすそ野を広げるため京都市交通局にも取材をお願いしようとも思っていました。『地下鉄に乗るっ』をテーマにオリジナルで萌えキャラを作っており、CMも流しています。

 「これは面白い企画になる」と思っていたのですが、実現はしませんでした。

複数社に現象があればネタになる

 このように、日頃の疑問から生まれる企画も多いのです。

 以前に「複数社に現象があると企画になると」お話しました。新しい話題でなくとも、合わせ技で企画ができることをお分かりいただけたと思います。


自社だけでなく、他の同じような商品やサービスなどを引き合いにだし、売り込むということも必要だと考えます。

2017年5月25日木曜日

集客目的なら事前取材できる工夫が必要

何をして欲しいニュースリリース?

「つまらないニュースリリースはゴミ箱行き」という言葉をお聞きになったことがありますか?

報道機関に送られてくるニュースリリースの一例
 新聞社や在京、在阪キー局(例えばTBSやよみうりテレビなどの東京・大阪から番組を配信している放送局)はそうかもしれませんが、私が所属していた放送局の報道部ではほとんど保管されていました。
 
 ニュースリリース専用の箱があり、記者クラブから集めた物、郵送されたもの、FAXで配信されたものとさまざまなニュースリリースやイベントチラシなどが日付別引き出しに入っています。

 だいたいは放送日のデスクがニュース項目を埋めるために見ますが、記者やディレクターも見ます。内容は、新商品の発表。役所や会社の会見。イベントの案内などいろいろです。

(本文とは関係ありません)
 「何をしてほしいのかわからない」のか、いつもわたしが首をかしげるのが、“1日しか開催しないイベント”のニュースリリースやチラシです。

 ニュースリリースやチラシを送る側は集客のために作っているのでしょうが、マスコミ、特にテレビにできることは「こういうイベントがありました」という事後扱いです。
 それも、たとえば、連凧を飛ばすとか、花火大会などの時節のもの。水素燃料電池車導入の式典など、新らしく社会的に意義のある物だけです。

集客目的なら事前に取材できるものが必要

 もし、集客のためにイベントの案内をしてほしいなら、工夫が必要です。
それは、イベント開催前に取材ができるものがあることです。それは動く物なのか?物語なのか?ストーリーとして撮影できるものなのか?

新聞のイベント掲載欄の例
 今後触れていきますが、記者クラブに投函するニュースリリースは記者クラブ加入社数の部数が必要なのでテレビ・新聞・(雑誌)関係なく同じものを入れるのでしょう。新聞の「イベント欄」掲載目的のために作っている方がほとんどだと思います。しかし、事前取材ができる物があれば、新聞の記者さんだって、記事として扱ってくれるかもしれません

 実例として、わたしがNHKで中継担当をしていた時。北海道庁主催で科学技術振興機構や道立の研究機関、電力会社などが一同に会して、夏休みの子どもたちに科学的な体験をしてもらう「サイエンスパーク」というイベントがありました。まさにこのイベントは1日だけの開催。
 わたしは道の担当者に「前日に2~3の研究施設のブースを作ってもらって、実演ができないか?」を検討してもらいました。

 この件がラッキーだったのは、「イベントが盛り上がるなら」と、尽力してくれた道の担当者と研究機関の人たちがこころよく引き受けてくれたことです。。
 なんと、前日夕方7時近い中継にかかわらず参加してくれることになりました。さらに場所を提供するホール側の協力もあり、生中継が実現することになったのです。テレビ中継で紹介されたことも手伝ってか、イベント当日は子どもたちでいっぱいでした。


いかがでしょうか?あなたがもし、イベントの集客のためにマスコミに扱ってほしいなら、事前にどんなことができるか具体的に考えて売り込みましょう。

2017年5月23日火曜日

テレビディレクターはどこからネタを探してくるのか?

テレビのネタは何から見つけているのか?

 番組ディレクターはいつもネタ不足です。時間をたくさん使って、情報を探したいのはやまやまですが、何でもかんでもやみくもに探して見つかるわけではありません。わたしがこのことについてみなさんにお話する時、よくクイズを出します。

ディレクターは何からネタを探してきているでしょうか?
  1. インターネット
  2. 新聞・雑誌などの紙媒体
  3. 他局のテレビやラジオ番組
あなたは、どれだと思いますか?

答えは2の新聞・雑誌などの紙媒体です。
意外と思われるかもしれませんが、ディレクターが企画を立てる場合や企画会議など題材としてのぼるものはほとんど新聞雑誌です。
私がよく参考にする新聞・雑誌

 ちなみに、インターネットは新聞や雑誌で見つけたキーワードが「世の中に浸透しているか」や「扱っている人、行なっている人がいるか?」を検証するために使います。
 さらに扱っている会社などの信用度を確かめるためにも見ます。

 インターネットはネタ探しの最初の段階では重要でありません。ただやみくもにネタを探すための検索は時間がかかるだけで、あまり効果的ではありません。

そして、他局で放送されたネタ。たいていのディレクターは嫌がりますが。私の場合、他局のテレビやラジオ番組で放送された題材も扱いました。そこに自分ならではの差別化つけられる可能性があると思ったからです。

 他局の番組を見て、「これはおもしろい」と思った場所や人にはよくアポを取らせていただきました。「昨日◯◯局で見たのですが」と電話をかけると、よく驚かれたり、笑われたりしました。まさかすぐに、テレビを見たお客様より早く他局から連絡があると思われないのが取材される側の実感でしょう。

マスコミデビューの早道は新聞・雑誌

 特に、新聞の記事は世の中の関心に近い話題が載っています。日替わりで話題が見つかる可能性が高いのです。放送局では一般紙も含め業界紙、地方紙なども定期購読しています。特に北海道では小ネタが豊富な北海道新聞は必ず目を通します。私が見ていたのは札幌圏、社会面、経済面でした。全国紙が扱わない街ネタが豊富なのです。

また、新聞・雑誌の流行を伝える記事は、1社(カ所)だけではなく複数社を載せます。1社だけのコメントはその会社だけが言っていることで、ともすれば宣伝ととらえられがちです。テレビ関係者はこれを最も嫌います。複数社のコメントが載っていれば、流行として紹介できるというわけです。

 例えば、グラノーラというシリアルの市場が伸びている話題がありました。記事の内容は、
「グラノーラの国内市場は過去3年間で3倍に伸びている(2015年時点)。ポテトチップスを手がける大手菓子メーカーも道内に生産拠点を作り増産する。札幌市内のグラノーラ製造メーカーも農協関連会社と提携し、玄米を使った新商品を出す。札幌市内には専門店も登場し、店独自に作ったパック詰めを売り出し30代~40代の女性客に人気」
と記事内にはメーカー2社、専門店1店と複数のことが書かれています。

よって、「新聞・雑誌に取り上げられるのがマスコミデビューの早道」と言えるのです。